パニック障害について

パニック障害への理解度

 「パニック障害」と聞いて、どんな病気かをすぐに理解できる人は少ないのではないでしょうか。私もパニック障害を発症した時、周りの人に病気について伝える時はとても苦労しました。ほとんどの人は病名を言っただけでは「パニック障害ってなに?パニックになるの?」という理解だったからです。もちろん私も自分がパニック障害を発症するまではそれがどんな病気なのかを全く知りませんでした。

またパニック障害の症状について誰かに説明しようにも、パニック発作というものはなんとも言葉で説明し難く、どうやってこの辛さを説明すればいいのだろうといつも苦戦していました。精神科医といってもパニック障害に詳しい人ばかりではなく、驚く事にパニック障害の事をあまり知らない人もいるのです。なので、どうやってこれを説明しようか。パニック障害の専門医なら説明しなくてもわかってくれるのにな。なんてもどかしい思いもしました。(当時九州に住んでいた為、パニック障害の専門医は近くにはいませんでした。)

そして、単純に精神疾患イコール精神的に落ち込んでるんだろうな。と考える人もいて有難いことなのですが「気晴らしにご飯連れて行ってあげるよ」なんて言ってくれる友人もいました。しかしパニック障害になると外食はおろか、車に乗る事も外に出る事さえも怖くてできない方が多く、もちろん私もその一人。当時の私はただその場を作り笑いでやり過ごすしか方法はありませんでした・・。

パニック障害の原因

 さて、パニック障害の原因って何なんでしょう。パニック障害は別名「脳の疲労病」なんて言われており過度なストレスや何らかの出来事が引き金になって起こってしまう事が多いです。メカニズムは一仮説では脳から出ているセロトニンという物質の分泌の異常と考えられており、パニック障害の症状は脳の誤作動によって引き起こされるとされております。しかしこれ以外にも要因はありまだ詳しくはわかっていないのが現状です。

 「私はパニック障害かもしれない。精神科に行くなんておかしくなっちゃったんだ。」などとあまりに悲観的になる必要はありません。パニック障害は10人に1人が発症する病気と言われており全く珍しい病気ではありません。ニュースを観れば多くの芸能人の方がパニック障害で活動休止なんて言葉をよく耳にします。歯が痛ければ歯医者に行くし、胃腸が悪ければ消化器内に行くように、たまたま調子が悪くなった場所が神経伝達物質だっただけの事です。

パニック障害の薬

 パニック障害の治療としては、一般的にはまず病院へ行きお薬を飲み始めます。パニック障害の第一選択薬と言われるお薬はSSRI(セロトニン再取込阻害薬)です。別名、抗うつ薬とも言ってその名の通りもともとうつ病の人に投与するお薬です。それが、あら不思議!なぜかパニック障害にも効いたぞ!というわけです。SSRIについてすごく簡単に説明すると、私たちの脳からはセロトニンという物質が出ており、その時に余ったセロトニンをまた脳が回収して再利用します。そのセロトニンを回収しないで出したままにしとくよ!というお薬です。セロトニンが常に溢れていてほしいんですよね。

補助やSSRIを使いたくない方にベンゾジアゼピン系の抗不安薬が使われる事も多いです。このベンゾジアゼピン系抗不安薬は速攻性があり、副作用も少なくとても人気です。

SSRIは実は効果が出るまで1か月くらいかかります。そして効果がでるまで人によって副作用もあります。また、SSRIも色んな種類があり、どのSSRIでまたどの量で効くかは人によってさまざまなので決まったSSRIが定着するまではとても時間がかかります。その間、パニック障害の症状はどうやって抑えるんだよ!効果ないのに副作用だけ出るって辛すぎ!ってなるので、そこをベンゾジアゼピン系抗不安薬で抑えちゃいます。そしてもちろんSSRIが効いてきても不安感が強い時や、不安感が来るかもしれないし念の為飲んどこうって時にも抗不安薬を飲みます。外出する際にお守りとして持ち歩く方もかなり多いです。私はできればSSRIとベンゾジアゼピン系抗不安薬のダブル使いがベストだと思っております。

しかしSSRIのどのお薬を試しても効果がない、または遺伝子的に合わないとなると三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬など…他の種類のお薬が使われることもあります。(でも臨床ではもうほとんどないらしい。)

そして実際に不安障害におけるSSRIの投薬で「少なからず良くはなったよ!」って人が70%~80%、「寛解したよ!」って人が45%です。(2012年、井上猛医師、「不安障害の薬物療法」より)長々と説明しちゃいましたが、まあお薬のことはお医者さんに任せましょうか。

パニック障害の治療のカギ

 次に、お薬で症状を抑えたとしても、あくまでお薬が「症状に蓋をしているだけ」なので、他の治療法も同時進行する必要があります。どんな事をしていくのかというと生活リズムの見直し、毎日の記録、適度な運動、認知の矯正、栄養療法などです。そして特にパニック障害のような神経症系の疾患には、こころの面をしっかりサポートしてくれたり認知の矯正を一緒に行うカウンセラーが治療にとても重要とされております。病院の診察時間はせいぜい数分程度で、医師が一人一人じっくりと話を聞く時間はほとんどありません。多くの人がそれに不満を持っているように感じます。パニック障害の治療は、医師(薬、からだ)、カウンセラー(こころ)、周りの人(環境)の3つの協力がとても重要です。なのでこころの部分(薬や身体の不調以外)の治療はカウンセラーに任せちゃいましょう。

 しかしこうやって読んでみると、あれもこれも・・・パニック障害ってこんな大変な治療をしないといけないの?今は生きているだけで精一杯なのに。そんな治療する体力もないよ。って方もたくさんいらっしゃると思います。私も発症当時にこれを全部しろ!なんて言われたら同じことを思っていたと思いますし、できなかったと思います。そんな時は無理にしなくていいんです。お薬も、お薬に対する恐怖感が強すぎるうちはまだ始めなくていいんです。そんな時はとにかく休んでください。話せる状態になったらカウンセラーに今の気分を報告したり世間話をしてみるだけでもいいのです。実際に私もSSRIの投薬を開始したのはパニック障害を発症してから1年半後、ブログを開始したのは2年後、栄養療法を開始したのは5年後でした。当時「パニック障害」という文字を見るだけで発作を起こしてた私がブログを始めるのなんて、もっての他でしたから。そして寛解した今は、自分も経験したからこそ同じようにパニック障害で苦しんでいる方の力になりたい。治療に協力したいと思っています。まずは30分、あなたの今の症状などをお聴かせください。緊張したり途中で調子が悪くなってしまい、うまく話せなくても何も問題はありません。ゆっくりと進めていきましょう。適切な治療を行えば、パニック障害は必ず良くなります。

れもんの木 代表 れもん